小規模宅地の特例、同居の考え方
小規模宅地の特例における「同居」とは
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を被相続人の親族が相続・遺贈により取得する場合、取得した親族が被相続人と「同居していた」かどうかが重要な要件の一つとなります。相続税を大幅に節税できるこの特例ですが、「同居」の判断は単純ではなく、様々な状況に応じた考え方を理解しておく必要があります。
特例適用のための同居要件の基本
特定居住用宅地等として小規模宅地の特例を適用するには、宅地を取得した親族が以下の要件を満たす必要があります。
- 相続開始の直前において、被相続人と同居していた親族であること
- 相続税の申告期限(相続開始から10か月)まで、引き続きその宅地に居住していること
- 相続税の申告期限まで、その宅地を保有していること
ここでいう「同居」とは、被相続人と取得者が同じ建物に日常的に起居・生活していることを意味します。
同居と認められる主なケース
① 同一の建物に一緒に住んでいる場合
最も典型的な同居の形態です。被相続人(例:親)と取得者(例:子)が同じ家屋に居住し、日常的に生活を共にしている場合は、同居として認められます。住民票の住所が同一であることは有力な証拠となりますが、それだけで判断されるわけではありません。
② 二世帯住宅の場合
二世帯住宅については、建物の構造や区分登記の有無によって取り扱いが異なります。
| 二世帯住宅の構造 | 同居の判断 |
|---|---|
| 内部で行き来できる構造(非区分登記) | 原則として同居と認められる |
| 内部で行き来できない完全分離型(区分登記あり) | 原則として同居とは認められない |
| 内部で行き来できない完全分離型(区分登記なし) | 同居と認められる可能性がある |
平成25年度の税制改正により、区分所有建物でない二世帯住宅については、内部が完全に分離されていても同居として認める方向に改正されました。ただし、区分所有登記がされている場合は従前通り同居と認められない場合があります。
③ 介護目的での同居の場合
親の介護のために子が同居を始めたケースでも、同居期間が十分にあり実態として生活を共にしていれば同居と認められます。「介護目的だから同居にならない」ということはありません。ただし、相続直前に駆け込みで住民票を移したような場合は、実態が伴っていないとして否認されることがあります。
同居と認められない・問題になるケース
① 住民票だけ移して実際には住んでいない場合
住民票を被相続人の自宅に移しておきながら、実際の生活は別の場所で行っていた場合は、同居とは認められません。税務署は光熱費の使用状況、郵便物の送付先、近隣住民への聞き取りなどを通じて実態を確認します。形式的な住所移転だけでは特例の適用は認められません。
② 週末だけ帰省している場合
仕事の都合で平日は別の場所に住み、週末だけ実家に帰省しているような場合は、「同居」とは認められないのが原則です。生活の本拠がどこにあるかという観点から判断され、週末のみの帰省では同居の実態があるとはいえません。
③ 単身赴任の場合
子(取得者)が単身赴任中で、配偶者や子(孫)は被相続人と同居しているが、本人(取得者)は別の場所に居住しているケースです。この場合、単身赴任が一時的なものであり、生活の本拠が被相続人と同居している自宅にあるとみなされれば、同居と認められる可能性があります。
「家なき子特例」との関係
被相続人と同居していない親族でも、一定の要件を満たす場合は「家なき子特例」として小規模宅地の特例を適用できる場合があります。
家なき子特例の主な要件は以下の通りです。
- 被相続人に配偶者・同居親族がいないこと
- 相続開始前3年以内に、自己または配偶者・3親等内の親族・同族会社等が所有する家屋に居住したことがないこと
- 相続税の申告期限まで、その宅地を保有していること
平成30年度の税制改正で家なき子特例の適用要件が厳格化されました。相続税対策として意図的に持ち家を手放すような行為を防ぐために、3年以内に同族会社の所有する家屋に住んでいた場合も対象外となっています。
同居の判定における注意点
同居の判定で特に注意すべきポイントをまとめます。
| 注意点 | 詳細 |
|---|---|
| 住民票だけでは不十分 | 実際の生活実態が伴っていることが必要 |
| 相続開始直前の状況が重要 | 長期間の入院・施設入所前の居住状況も考慮される |
| 申告期限まで居住継続が必要 | 相続後10か月以内に転居した場合、特例が適用できない可能性がある |
| 二世帯住宅は区分登記に注意 | 区分所有登記の有無で取り扱いが異なる |
まとめ
小規模宅地の特例における「同居」の判断は、住民票の住所だけでなく、実際の生活実態を総合的に判断して行われます。二世帯住宅や単身赴任、介護目的での同居など、様々なケースによって判断が異なるため、相続税申告を行う際は税理士に相談しながら、自身のケースが同居要件を満たすかどうかを事前にしっかり確認することが重要です。
特例を適切に活用することで相続税を大幅に軽減できる可能性があります。同居の考え方を正しく理解し、要件を満たすよう準備しておきましょう。


