ミニマムタックスとは?令和8年・令和9年の制度の違いをわかりやすく解説
近年、超富裕層を対象とした新たな税負担の仕組みとして「ミニマムタックス」が注目されています。正式には「特定基準所得金額に係る所得税の課税の特例」と呼ばれ、極めて高い水準の所得がある人に一定の税負担を求める制度です。令和8年度税制改正では、この制度の見直しが行われ、令和9年分以後の所得税から内容が大きく変わります。ここではミニマムタックスの基本的な仕組みと、令和8年分までの制度と令和9年分以後の制度の違いについて解説します。
ミニマムタックスとは何か
日本の所得税は、給与所得や事業所得などを合算して課税する「総合課税」が原則ですが、株式の譲渡益や配当などは税率が一定の「申告分離課税」が採用されています。分離課税の税率は所得税・住民税をあわせて約20%であるため、所得の大部分を株式譲渡益などで得ている超富裕層は、所得金額が数億円にのぼっても実際の負担率が低くなる、いわゆる「1億円の壁」と呼ばれる現象が指摘されてきました。ミニマムタックスは、この負担率のゆがみを是正するために導入された制度で、一定の所得水準を超える人については、通常の所得税額とは別に、基準に満たない分を上乗せして課税する仕組みになっています。
令和7年分・令和8年分における制度の内容
ミニマムタックスは令和7年分の所得税から適用が始まりました。対象となるのは、合計所得金額から一定の所得を除いた「基準所得金額」が高額にのぼる人で、具体的には基準所得金額から3.3億円を差し引いた金額に22.5%を掛けた金額が、通常の計算による所得税額を上回る場合に、その差額が追加で課税されます。この基準に該当するのは合計所得金額がおおむね30億円を超えるような、ごく一部の超富裕層に限られており、株式や自社株の譲渡によって一時的に多額の利益を得た場合などが典型的なケースです。令和8年分についても、この3.3億円の控除額と22.5%の税率がそのまま適用されます。
令和8年度税制改正による見直しと令和9年分からの変更点
令和8年度税制改正では、ミニマムタックスの対象を広げ、負担を強化する見直しが行われました。この見直しは令和9年分以後の所得税から適用される予定で、特別控除額が3.3億円から1.65億円に引き下げられるとともに、税率も22.5%から30%へ引き上げられます。控除額が半分程度に縮小されることで、これまで対象にならなかった所得水準の人にも新たに課税が及ぶ可能性があり、対象者の裾野が広がる点が大きな特徴です。
令和8年分と令和9年分で何が変わるのか
同じ基準所得金額であっても、令和8年分までと令和9年分以後とでは追加課税の有無や金額が異なることになります。たとえば控除額を上回る所得部分に着目すると、令和8年分までは3.3億円を超えた部分に22.5%が課される計算であるのに対し、令和9年分以後は1.65億円を超えた部分に30%が課される計算になるため、同じ所得水準でも令和9年分の方が追加課税の対象になりやすく、かつ税額も大きくなる傾向があります。特に自社株や不動産の売却などによって単年度に大きな譲渡益が生じるケースでは、売却のタイミングによって手取り額に無視できない差が生じる可能性があるため注意が必要です。
| 項目 | 令和7年分・令和8年分 | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 特別控除額 | 3.3億円 | 1.65億円 |
| 税率 | 22.5% | 30% |
| 計算式 | (基準所得金額-3.3億円)×22.5%-基準所得税額 | (基準所得金額-1.65億円)×30%-基準所得税額 |
事業承継や資産売却を考えている方への影響
事業承継や相続対策を検討している経営者・資産家の方にとって、ミニマムタックスは無関係な制度ではありません。後継者への株式移転にあわせて自社株を売却する場合や、M&Aによって会社を譲渡する場合には、譲渡益が一時的に高額となり、ミニマムタックスの対象になる可能性があります。特に令和9年分以後は控除額が引き下げられるため、これまで対象外だった規模の取引であっても新たに課税対象となるケースが増えることが見込まれます。売却や贈与、相続のタイミングを検討する際には、単年度の所得水準がどの程度になるかをあらかじめ試算しておくことが重要です。
まとめ
ミニマムタックスは超富裕層の税負担の公平性を高めるための制度ですが、令和8年度税制改正によって令和9年分以後は控除額の引き下げと税率の引き上げが行われ、対象となる人や税負担が大きく変わります。自社株の売却や大規模な資産の譲渡を予定している場合は、令和8年分までに実行するか令和9年分以後に持ち越すかによって税負担が変わる可能性があるため、事前に専門家へ相談し、シミュレーションを行った上で判断することをおすすめします。


