「とりあえず共有名義に」が最悪の選択だった——身動きが取れなくなった土地の末路

※本記事は、相続で起こりやすいトラブルを分かりやすく解説するための架空事例です。実在の人物・団体・事案とは関係ありません。

「売るか使うか決められないから、とりあえず3人で共有にしよう」

30年前、山田家の兄弟3人は父から引き継いだ郊外の土地(300坪)をそう決めました。しかし3人のうち長男はすでに死亡し、その持分は妻と子2人に分散。次男は認知症で判断能力なし。三男だけは売却を望んでいますが、全員の合意が取れず身動きが取れません。

なぜトラブルになったのか

土地の売却・活用には、共有者全員の合意が必要です(民法上は「変更行為」)。当初3人だった共有者が世代を経て5人に増え、うち1人が意思能力を失ったことで、法的な手続きなしには何もできなくなりました。

何が問題だったのか

① 共有者が増えるほど合意が難しくなる

相続のたびに共有持分が細分化されていきます。3人→5人→さらに次の世代では10人以上になることも。関係が薄い親戚が共有者になると、連絡すら取れないケースもあります。

② 認知症・相続未了の共有者への対処

意思能力のない共有者(認知症など)は、法定後見制度を利用して成年後見人を選任しなければ、本人に代わって同意することができません。後見手続きは時間もコストもかかります。

③ 固定資産税は共有者全員に請求が来る

活用もできない土地の固定資産税を毎年払い続けることになります。不満が蓄積し、関係がさらに悪化するケースも。

実務上どう考えるべきか

すでに共有状態になっている場合は、「共有物分割請求」という法的手段があります。協議が整わない場合は裁判所に申立てを行い、分割・売却・代償金支払いなどの方法で解決を図ります。2023年施行の「所有者不明土地関連法」により、共有者の一部が不明・不在でも手続きできるケースも増えています。

事前にできる対策

  • 不動産を相続する際は「共有を避ける」を原則とする
  • 代償分割(一人が取得し他の相続人に現金を支払う)や換価分割(売却して分ける)を検討する
  • どうしても共有にする場合は「共有物分割協議書」や「共有者間の取り決め」を文書化しておく
  • 親が元気なうちに遺言書や家族信託で不動産の行方を決めておく

まとめ

「とりあえず共有」は問題を先送りにするだけです。10年後・20年後に状況が変わると、解決はさらに難しくなります。相続時に不動産の分け方を決める際は、将来のリスクを見据えた選択を専門家とともに行いましょう。

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