再婚家庭の相続で前妻の子と後妻が激突——誰が何をもらう権利があるのか
※本記事は、相続で起こりやすいトラブルを分かりやすく解説するための架空事例です。実在の人物・団体・事案とは関係ありません。
「お義父様の財産については、私たちで話し合います」
後妻の美代さん(61歳)がそう言うと、前妻との間の長男・誠一さん(38歳)は顔色が変わりました。父・隆之さん(享年70歳)は15年前に再婚し、後妻との間に子ども(実子)もいます。財産は自宅と預金合わせて約6,000万円。誠一さんは10代の頃から父とは疎遠でしたが、相続権は別の話です。
なぜトラブルになったのか
美代さんは「前妻との子には財産を渡したくない」という気持ちから、遺産分割の連絡を意図的に遅らせました。しかし誠一さんも法律上の相続人であり、遺産分割協議には全員の参加と合意が必要です。知らないうちに手続きを進めようとしたことで、法的トラブルに発展しました。
何が問題だったのか
① 前妻の子も「第一順位の相続人」
民法では、被相続人の子はすべて(前妻・後妻どちらとの子であっても)等しく第一順位の相続人です。今回の法定相続分は以下のようになります。
- 後妻・美代さん:1/2
- 前妻との子・誠一さん:1/4
- 後妻との子:1/4
誠一さんを除外して協議を進めることは法律上できません。
② 遺産分割協議の無効リスク
相続人の一人を除外して行った遺産分割協議は、法律上無効です。後から発覚すると手続きのやり直しが必要になり、余計な費用と時間がかかります。
③ 遺言書がなかった
隆之さんが「美代と後妻の子に多く渡す」という遺言を残していれば、誠一さんへの遺留分(法定相続分の1/2 = 全体の1/8)は残りますが、ある程度の希望を反映させることはできました。
実務上どう考えるべきか
再婚家庭では「誰が相続人か」を正確に把握した上で、全員参加の遺産分割協議を進める必要があります。感情的な対立が深い場合は、調停委員が間に入る家庭裁判所の調停が有効です。
事前にできる対策
- 再婚後は早めに遺言書を作成し、財産の分配方針を明確にする
- 前妻の子とも最低限の連絡が取れる関係を維持しておく
- 生命保険の受取人を後妻や後妻の子に指定することで、現金の確保ができる
- 家族信託を活用して財産管理の仕組みを整える
まとめ
再婚家庭の相続は、感情と法律が真っ向からぶつかりやすい場面です。「関係ない」と思っていても、法律上は相続人——この事実を全員が理解した上で、専門家を交えた話し合いを進めることが重要です。


