相続財産の調査方法【預貯金・不動産・株式】完全ガイド
「父が亡くなったけど、財産がどこにあるかわからない」「通帳はいくつあるの?不動産は?株は?」――相続が発生したとき、まず直面するのが財産の全体像をつかむ作業です。
相続財産の調査は、遺産分割や相続税申告の出発点。しかし、被相続人がすべての財産を家族に伝えているケースは稀で、多くの方が「どこから手をつければいいか」と悩みます。調査を怠ると、後から未知の財産や債務が発覚し、トラブルや追徴税が発生することも。
本記事では、預貯金・不動産・株式・生命保険・債務まで、相続財産の調査方法をカテゴリ別に完全解説します。専門家に頼む前に自分でできることと、プロに任せるべき場面の判断基準も併せてご紹介します。
相続財産調査の全体像と進め方
相続財産の調査は、亡くなった日(相続開始日)から10ヶ月以内に相続税申告が必要な場合は特に急ぎます。まず全体の流れを把握してから、各資産の調査に入りましょう。
相続財産調査の全体フロー
STEP 1:遺言書の有無を確認(自筆・公正証書・法務局保管)
STEP 2:手がかりを集める(通帳・郵便物・スマホの通知など)
STEP 3:金融機関に残高証明書を請求
STEP 4:不動産の名寄帳・登記事項証明書を取得
STEP 5:証券会社・保険会社に照会
STEP 6:債務(借入・未払税金等)を確認
STEP 7:財産目録を作成してまとめる
調査開始前に集めるべき書類・手がかり
被相続人の書斎・金庫・メール・スマホを確認し、以下を探します。
- 通帳・キャッシュカード:金融機関名と口座番号がわかる
- 証券口座の書類・取引報告書
- 生命保険の証券・保険料引落し通帳
- 固定資産税の納税通知書(不動産の所在がわかる)
- 確定申告書の控え(直近3年分)
- 郵便物・メール(金融機関・証券会社からの通知)
- 貸金庫の鍵・レシート
| 財産の種類 | 調査先 | 取得書類 | 費用目安 |
|---|---|---|---|
| 預貯金 | 各金融機関 | 残高証明書・取引履歴 | 無料〜1,100円/口座 |
| 不動産 | 市区町村・法務局 | 名寄帳・登記事項証明書 | 300〜600円/件 |
| 上場株式 | 証券会社・信託銀行 | 残高証明書・取引報告書 | 無料〜2,200円 |
| 生命保険 | 保険会社 | 契約照会・解約返戻金証明 | 無料 |
| 債務・借入 | 信用情報機関・金融機関 | 信用情報開示報告書 | 1,000〜1,500円 |
預貯金の調査方法|残高証明書の請求手順
預貯金は最も調査しやすい財産ですが、金融機関の数だけ手続きが必要です。口座が多い方は5〜10箇所に問い合わせるケースもあります。
STEP 1:口座のある金融機関を特定する
通帳・カードがない場合は、以下の方法で特定します。
- 確定申告書の「公的年金等の源泉徴収票」の振込先
- スマートフォンのアプリ(インターネットバンキングのアイコン)
- 郵便物(通帳送付・ATMレシート)
- 国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」でも口座照会は不可のため地道な調査が必要
STEP 2:残高証明書・取引履歴を請求する
相続が発生したら、まず各金融機関の窓口またはコールセンターに連絡し、「相続による残高証明書の発行」を依頼します。
残高証明書請求に必要な書類
共通で必要なもの:
- 被相続人の死亡が確認できる書類(戸籍謄本または死亡診断書のコピー)
- 請求者(相続人)の本人確認書類(運転免許証等)
- 請求者と被相続人の関係がわかる書類(戸籍謄本)
- 印鑑(認印可の場合と実印のみの場合あり)
基準日:相続開始日(死亡日)現在の残高証明書を請求する
STEP 3:過去5〜7年の取引履歴も取得する
残高証明書だけでなく、過去5〜7年分の取引履歴も取得しましょう。相続税調査では税務署が過去7年の出金を確認します。不自然な大額出金があると、生前贈与や名義預金として問題になることがあります。
子供や孫の名義で預金していても、実質的に被相続人が管理していた口座は「名義預金」として相続財産に含まれます。家族名義の口座も調査対象です。
不動産の調査方法|名寄帳と登記事項証明書
不動産は所有者がどこに何を持っているかを把握することが第一歩。固定資産税の納税通知書があれば比較的簡単ですが、古い不動産や他府県の不動産は見落としがちです。
名寄帳(なよせちょう)の取得
名寄帳とは、同一市区町村内の不動産をまとめて確認できる台帳です。市区町村の税務課窓口で「被相続人名義の名寄帳を取得したい」と申し出て取得します。
名寄帳取得の手続き
| 取得場所 | 各市区町村の税務課・資産税課 |
| 費用 | 無料〜300円程度 |
| 持参するもの | 戸籍謄本・本人確認書類・印鑑 |
| 注意点 | 市区町村をまたぐ不動産は別途請求が必要 |
登記事項証明書の取得
名寄帳で不動産の存在を確認したら、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。これで正式な所有者・面積・抵当権の有無が確認できます。
- 窓口申請:600円/件
- オンライン申請(登記ねっと):480〜500円/件(郵送)、330円/件(窓口受取)
広域の不動産調査方法
被相続人が複数の市区町村に不動産を持っている場合、全てを特定するのは手間がかかります。以下の方法を組み合わせます。
- 確定申告書の「不動産所得」欄から所在地を特定
- 固定資産税納税通知書(複数市区町村分が届いているはず)
- 法務局の「不動産登記情報提供サービス」でオンライン検索
株式・有価証券の調査方法
株式・投資信託・債券などの有価証券は、証券会社や信託銀行に口座があることが前提です。近年はオンライン証券も多く、書類が自宅に届かないケースも増えています。
上場株式の調査手順
証券口座の特定方法
①書類から特定:取引報告書・年間取引報告書・配当通知書
②スマホから特定:証券会社アプリのインストール状況を確認
③配当金から特定:郵便局の「配当金振替通知書」(ゆうちょ経由の場合)
④株主総会案内:各企業から自宅に送付される封書を確認
証券保管振替機構(ほふり)への照会
どの証券会社に口座があるかわからない場合、証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすることで、上場株式を保有している証券会社を一覧で確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請先 | 株式会社証券保管振替機構(JASDEC) |
| 費用 | 6,050円(税込) |
| 開示される情報 | 口座を保有する証券会社名(残高は非開示) |
| 所要期間 | 約1〜2週間 |
| 注意点 | 非上場株式・投資信託・債券は対象外 |
非上場株式(自社株)の調査
中小企業のオーナーが亡くなった場合、自社株(非上場株式)も相続財産です。会社の帳簿・株主名簿を確認し、税理士に評価を依頼する必要があります。
生命保険・その他財産・債務の調査
生命保険の調査
生命保険金は受取人固有の財産として相続財産に含まれませんが、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象になります。また、解約返戻金がある保険は相続財産そのものです。
生命保険の調査は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」が利用できます(1照会につき3,000円、2023年度から開始)。
その他の財産
見落としやすい財産として以下があります。
- ゴルフ会員権・リゾート会員権:証書を確認。相続税評価額あり
- 貸付金・未収金:金銭消費貸借契約書を探す
- 著作権・特許権:クリエイター・発明者の場合は要確認
- 仮想通貨(暗号資産):取引所のメール・アプリを確認
- 未払いの退職金・給与:勤務先に照会
債務・マイナスの財産の調査
相続ではプラスの財産だけでなく、借入金などマイナスの財産も引き継ぎます。債務が多い場合は「相続放棄」を検討する必要があるため、早急な調査が重要です。
相続放棄ができるのは、相続の開始を知った日から原則3ヶ月以内です。期限を過ぎると単純承認とみなされ、すべての債務も引き継ぎます。債務が多そうな場合は早急に弁護士・司法書士に相談を。
債務の調査方法:
- 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求:借入残高・カードローン等が確認できる(各1,000〜1,500円)
- 金融機関・消費者金融への照会:借入証書・返済通知書を確認
- 税金の未払い:市区町村・税務署で確認
- 未払い家賃・医療費:郵便物・請求書を確認
財産調査でよくある失敗と対策
失敗①:タンス預金・貴金属を見落とす
現金・貴金属・美術品・骨董品は金融機関の調査では判明しません。自宅の金庫・貸金庫を必ず確認し、家族で実地調査しましょう。相続税申告では、現金も申告が必要です(税務署は亡くなる前の出金額から推計)。
失敗②:他府県・海外の不動産を見落とす
名寄帳は市区町村単位です。被相続人が複数市区町村に不動産を持っていた場合、全ての市区町村で個別に取得が必要。確定申告書で「不動産所得」の物件所在地を確認しましょう。
失敗③:休眠口座を見落とす
使っていない口座でも相続財産です。通帳がない場合でも、過去の郵便物・記憶をたどって金融機関に問い合わせましょう。なお、休眠預金(10年以上未取引)は預金保険機構に移管されている可能性があります。
失敗④:仮想通貨を見落とす
近年増えているのが仮想通貨(暗号資産)の見落とし。取引所からのメール・スマホのアプリ・秘密鍵のメモを探しましょう。見落とすと相続税の申告漏れになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続財産調査は自分でできますか?専門家は必要ですか?
A. 基本的な調査(通帳・固定資産税通知書・証券会社への問い合わせ)は自分でできます。ただし、財産が多い・複数都道府県にまたがる・非上場株式がある・相続税申告が必要な場合は、税理士や司法書士への依頼をおすすめします。調査漏れは申告漏れや追徴税につながります。
Q. 財産調査にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 財産の種類や数によりますが、一般的に1〜2ヶ月程度かかります。残高証明書の発行に数週間かかる金融機関もあります。相続税申告の期限(10ヶ月)を考慮し、亡くなった直後から調査を始めることが重要です。
Q. 相続人全員で調査しなければなりませんか?
A. 1人の相続人が単独で調査・書類請求することは可能です。ただし、金融機関によっては相続人全員の同意書類(遺産分割協議書等)が必要な場合があります。また、調査結果は全相続人に共有するのが原則です。
Q. 被相続人が借金を隠していた場合、どうすれば発見できますか?
A. 信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行協会)に開示請求することで、消費者金融・クレジット等の借入履歴が確認できます。また、税務署で税金の未払いを確認、郵便物で請求書を確認することも重要です。多額の借金が発覚した場合は、相続放棄(3ヶ月以内)を検討しましょう。
Q. 不動産の評価額はどこで確認できますか?
A. 相続税の申告では「路線価方式」または「倍率方式」で評価します。路線価は国税庁の「財産評価基準書」(路線価図)で確認できます。固定資産税評価額は市区町村の固定資産評価証明書で確認可能です。正確な評価は税理士に依頼することをおすすめします。
相続財産の調査でお困りですか?
「どこに財産があるかわからない」「調査漏れが心配」というお悩みを抱えているなら、専門家への相談をご検討ください。当事務所では、財産調査から相続税申告・遺産分割まで、相続全般をサポートしています。


