事業承継税制(特例措置)完全解説|自社株の贈与税・相続税を100%猶予する仕組みと手続き
中小企業オーナーが自社株を後継者に承継する際の最大の障壁が「相続税・贈与税の負担」です。事業承継税制の特例措置を使えば、この税負担を最大100%猶予(実質的に免除)できます。2027年3月末という期限が迫る今、制度の仕組みと手続きを詳しく解説します。
事業承継税制とは?
中小企業の円滑な事業承継を促進するため、後継者が自社株を取得した際の贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の要件を満たせば最終的に免除する制度です。「一般措置」と「特例措置(2018年〜)」の2種類があり、特例措置の方が大幅に優遇されています。
【一般措置と特例措置の比較】
| 項目 | 一般措置 | 特例措置(2018年〜) |
|---|---|---|
| 猶予割合 | 贈与税:100% 相続税:80% | 贈与税・相続税とも:100% |
| 対象株数 | 発行済株式の最大2/3まで | 全株式(制限なし) |
| 承継後の雇用維持要件 | 5年間・平均80%以上の雇用維持 | 要件を満たせなくても猶予継続可(理由報告で対応) |
| 後継者の人数 | 1名のみ | 最大3名まで |
| 適用申請期限 | 期限なし | 特例承継計画の提出:2027年3月31日まで |
特例措置の適用要件
① 会社の要件
【対象となる会社の要件】
- ✓ 中小企業者に該当すること(業種別の資本金・従業員数の基準あり)
- ✓ 非上場会社であること
- ✓ 風俗営業会社・一定の資産管理会社に該当しないこと
- ✓ 常時使用従業員が1名以上いること
② 先代経営者(贈与者・被相続人)の要件
【先代経営者の要件】
- ✓ 会社の代表者であったこと
- ✓ 贈与・相続前に筆頭株主であったこと(同族関係者含む)
- ✓ 贈与の場合:贈与後に代表権を有していないこと(代表者を退任すること)
③ 後継者(受贈者・相続人)の要件
【後継者の要件】
- ✓ 会社の代表者であること
- ✓ 18歳以上(贈与の場合)
- ✓ 役員就任後3年以上経過していること(贈与の場合)
- ✓ 同族関係者の中で筆頭株主となること
手続きの流れ(特例措置)
【事業承継税制・特例措置の手続きフロー】
| ステップ | 内容 | 期限・タイミング |
|---|---|---|
| STEP1 | 認定経営革新等支援機関(税理士等)と特例承継計画を作成 | 2027年3月31日まで |
| STEP2 | 特例承継計画を都道府県知事に提出・確認書を受領 | 2027年3月31日まで |
| STEP3 | 自社株の贈与・相続による取得 | 2027年12月31日まで |
| STEP4 | 都道府県知事への認定申請(経営承継円滑化法に基づく) | 贈与・相続後8ヶ月以内 |
| STEP5 | 税務署に贈与税・相続税の申告書を提出(猶予申請) | 申告期限まで |
| STEP6 | 5年間の経営継続・毎年の報告(都道府県・税務署) | 5年間毎年継続 |
猶予税額が「免除」される条件
猶予された税金は以下の条件を満たすと最終的に免除されます(つまり実質ゼロになります)。
【猶予税額が免除になる主なケース】
- ✓ 後継者が死亡したとき
- ✓ 後継者が次の後継者に再度事業承継した場合(次世代承継)
- ✓ 承継後5年経過後に会社が破産・解散した場合(一定条件)
- ✓ 後継者が70歳以上になった場合など(中小企業庁が定める条件)
節税効果のシミュレーション
【特例措置を使わなかった場合の税負担例】
例:自社株の評価額3億円を後継者(子)に贈与した場合
- 特例措置なし(暦年課税):約1億4,000万円の贈与税(税率55%)
- 特例措置あり:贈与税の猶予額=約1億4,000万円(実質ゼロ)
差額:約1億4,000万円の節税効果
事業承継税制の注意点・リスク
【猶予が取り消され、一括納付になる場合】
- ▲ 後継者が代表者を退任した場合(5年以内)
- ▲ 株式を第三者に譲渡した場合(M&Aなど)
- ▲ 会社が資産管理会社に該当することになった場合
- ▲ 毎年の報告を怠った場合
※ 猶予取消時は猶予税額に利子税が加算されて一括納付となります。適用後の管理が重要です。
まとめ:2027年3月の期限前に動き出す
事業承継税制の特例措置は、中小企業オーナーにとって数千万〜数億円規模の節税が実現できる強力な制度です。ただし、特例承継計画の提出期限(2027年3月31日)と株式贈与の期限(2027年12月31日)が定められており、準備に時間がかかるため今すぐ動き出すことが不可欠です。
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