役員退職金で自社株評価を下げる|事業承継前に実施すべき最強の株価引き下げ対策
「自社株の評価が高すぎて、後継者への移転が難しい」「相続税・贈与税が高額になりそう」という中小企業オーナーに最も効果的な対策のひとつが役員退職金の支給です。適切なタイミングで実施することで、自社株評価を劇的に下げることができます。
なぜ役員退職金で自社株評価が下がるのか?
非上場会社の自社株評価(類似業種比準価額方式・純資産価額方式)は、会社の利益・純資産・配当に基づいて計算されます。役員退職金を支給すると、以下の経路で評価額が大幅に下がります。
【役員退職金が自社株評価を下げるメカニズム】
| 評価方式 | 退職金支給による影響 |
|---|---|
| 純資産価額方式 | 退職金が損金算入→純資産(利益剰余金)が直接減少→評価額が大幅低下 |
| 類似業種比準価額方式 | 当期利益が大幅に減少→比準要素「利益」の数値が下がる→評価額が低下 |
→ 退職金支給の翌期・翌々期は「直前期末以前2年間の利益」が低くなり、株価引き下げ効果が2〜3年間続く
役員退職金の「適正額」の計算方法
役員退職金は、税務上の損金として認められるには「不相当に高額でないこと」が必要です。一般的に使われる計算式は以下の通りです。
【役員退職金の適正額の目安(功績倍率法)】
適正退職金額 = 最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率
| 役職 | 功績倍率の目安 |
|---|---|
| 代表取締役社長 | 3.0倍 |
| 専務取締役 | 2.5倍 |
| 常務取締役 | 2.0倍 |
| 取締役 | 1.5〜2.0倍 |
例:月額報酬100万円・在任30年・代表取締役 → 100万円 × 30年 × 3.0 = 9,000万円
節税効果のシミュレーション
【退職金9,000万円支給時の自社株評価への影響例】
前提:純資産5億円の会社、自社株評価5億円(純資産価額方式)
- 退職金支給前の自社株評価:5億円
- 退職金9,000万円支給→純資産が5億円−9,000万円=4億1,000万円に低下
- 退職金支給後の自社株評価:約4億1,000万円
- 評価額の低下:▲9,000万円(贈与税・相続税率40%換算で約3,600万円の節税効果)
※ 退職金の受取側(オーナー)の税負担:退職所得控除後の金額×1/2×所得税率(有利な税率)
退職金を使った事業承継のタイミング戦略
【最も効果的な実施タイミング】
| ステップ | 実施内容 |
|---|---|
| ①退職金支給(決算期末) | 株価引き下げ効果が最大になる決算期に退職金を支給 |
| ②翌期・翌々期(株価低迷期間) | 低くなった株価の間に後継者への株式贈与・譲渡を実施 |
| ③事業承継税制の活用 | 同時期に事業承継税制(特例措置)の申請も行い税負担をゼロに |
注意点・よくある失敗
【役員退職金の注意点】
- ▲ 「みなし退職」は認められない→代表取締役を退任し、実質的に経営から退くことが必要。名目上の退任(影響力を持ち続ける)は税務上問題になりやすい
- ▲ 退職金の財源確保が必要→現金がない場合は役員退職金目的の生命保険を活用
- ▲ 功績倍率が高すぎる場合、税務署に過大と判断され損金不算入になるリスク
- ▲ 退職後に業務委託等で関与する場合は退職の事実が否認されるリスクがある
まとめ
役員退職金の活用は、自社株評価を短期間で大幅に引き下げる最も直接的で効果的な手法です。ただし適切な功績倍率の設定・退任の実質化・財源の確保など、専門的な判断が必要な要素が多く、税理士・M&Aアドバイザーと連携した上で計画的に実施することが不可欠です。
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