相続税が払えない! 不動産しかない遺産で兄弟が対立したケース

※本記事は、相続で起こりやすいトラブルを分かりやすく解説するための架空事例です。実在の人物・団体・事案とは関係ありません。

「相続税の申告書が届いたが、払えるお金がない」

田中家の長女・幸子さん(55歳)は頭を抱えていました。母・文枝さんが亡くなり、残されたのは都内の土地(評価額8,000万円)と自宅(評価額3,000万円)、そして預貯金200万円のみ。相続税の試算は約1,200万円。預貯金では到底足りません。

なぜトラブルになったのか

弟の健二さん(51歳)は「土地を売って税金を払うべきだ」と主張。しかし幸子さんは「母が大切にしていた土地を売りたくない」と反対。さらに土地には貸主が存在し、簡単には売却できない事情もありました。申告期限(相続開始から10か月)が迫る中、話し合いは平行線のままでした。

何が問題だったのか

① 相続税は「現金一括納付」が原則

相続税は、申告期限までに現金で一括納付するのが原則です。「不動産しかないから払えない」という言い訳は通りません。準備不足のまま期限を迎えると、延滞税が加算されてしまいます。

② 延納・物納という手段を知らなかった

実は相続税には、現金一括納付が難しい場合の救済措置があります。

  • 延納:最長20年の分割払い(ただし利子税がかかります)
  • 物納:不動産などの現物で納税する制度(条件が厳しく、審査も必要)

田中家ではこれらの制度を知らないまま、売却か否かで感情的に対立していたのです。

③ 生前に税対策をしていなかった

文枝さんの財産構成は「不動産に偏りすぎ」でした。現金や有価証券をバランスよく持っていれば、納税原資の問題はここまで深刻にならなかったでしょう。

実務上どう考えるべきか

まず税理士に相談して、正確な相続税額を把握することが第一歩です。その上で延納・物納の要件を確認し、不動産の一部売却も含めた現実的な選択肢を検討します。感情的に「売りたくない」と言い続けるより、「いつまでに、いくら用意できるか」という視点で話し合うことが重要です。

事前にできる対策

  • 生前に税理士へ相談し、相続税の概算を把握しておく
  • 死亡保険金(非課税枠あり)を活用して納税資金を準備する
  • 不動産の一部を売却・賃貸して流動性を高めておく
  • 遺言書で「誰がどの財産を相続するか」を明確にし、税負担の分担も話し合っておく

まとめ

不動産が中心の遺産は「資産はあるのに現金がない」という状況を生みやすく、相続税の支払いで家族が揉める典型パターンです。生前からの準備と、相続発生後の早期相談が、こうしたトラブルを防ぐ最善の方法です。

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