相続税の障害者控除とは?控除額の計算方法・要件・必要書類をわかりやすく解説
相続税の障害者控除とは?
相続税の障害者控除とは、障害者が相続または遺贈によって財産を受け継いだ場合に、その人の相続税額から一定額を差し引くことができる制度です(相続税法第19条の4)。障害を持つ相続人の生活を守ることを目的とした人的控除の一つで、要件を満たせば大きな節税効果があります。
税額控除であるため、相続税の課税価格(財産評価額)から差し引くのではなく、計算された相続税額そのものから直接差し引くことができます。
障害者控除の適用要件
障害者控除を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 相続または遺贈によって財産を取得した人であること
- その人が法定相続人であること(相続放棄をした人も含む)
- 財産を取得した時点(相続開始時)において、日本国内に住所があること
- 財産を取得した時点において、85歳未満であること
- 財産を取得した時点において、障害者に該当すること
なお、相続放棄をした人であっても、遺贈によって財産を受け取った場合は法定相続人として控除の対象となります。
「障害者」の範囲
相続税法上の「障害者」とは、以下のいずれかに該当する人をいいます。
一般障害者
- 身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている人(障害の等級3〜6級)
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人(障害等級2・3級)
- 療育手帳の交付を受けている人
- 戦傷病者手帳の交付を受けている人(障害の程度が恩給法別表第1号表の2の第6項〜第8項)
- 原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている人
- 精神または身体に障害のある65歳以上の人で、市区町村長・福祉事務所長から特別障害者に準ずるものとして認定を受けていない人
特別障害者
- 身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている人(障害の等級1・2級)
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人(障害等級1級)
- 重度の知的障害者と判定された人(療育手帳でAまたはA相当の認定を受けている人)
- 常に就床を要し、複雑な介護を要する人
- 精神または身体に障害のある65歳以上の人で、市区町村長・福祉事務所長から特別障害者に準ずるものとして認定を受けた人
- 戦傷病者手帳の交付を受けている人(恩給法別表第1号表の2の第1項〜第5項に掲げる程度)
障害者控除の控除額の計算方法
障害者控除の額は、障害者の区分(一般障害者・特別障害者)と、相続開始時の年齢によって決まります。
控除額の計算式
| 区分 | 控除額(1年あたり) |
|---|---|
| 一般障害者 | 10万円 × (85歳 − 相続開始時の年齢) |
| 特別障害者 | 20万円 × (85歳 − 相続開始時の年齢) |
年齢の計算では、相続開始日における年齢を使用し、1年未満の端数は切り捨てます。
計算例
例①:一般障害者・相続開始時40歳の場合
10万円 × (85歳 − 40歳)= 450万円の控除
例②:特別障害者・相続開始時30歳の場合
20万円 × (85歳 − 30歳)= 1,100万円の控除
例③:特別障害者・相続開始時70歳の場合
20万円 × (85歳 − 70歳)= 300万円の控除
このように、若いほど控除額が大きくなります。85歳以上の障害者は控除額が0円となります。
控除しきれない場合の取り扱い(扶養義務者への充当)
障害者控除の額が、その障害者本人の相続税額を超える場合(控除しきれない場合)は、その超過額を扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。
扶養義務者とは、配偶者・直系血族・兄弟姉妹などのほか、家庭裁判所の審判によって扶養義務者となった3親等内の親族をいいます。
具体例
障害者控除の額が500万円で、障害者本人の相続税額が200万円の場合:
- 障害者本人の相続税:200万円 − 200万円 = 0円
- 残り300万円を扶養義務者(例:父・兄)の相続税額から控除できる
扶養義務者が複数いる場合は、その扶養義務者間で協議によって各人の控除額を決めることができます。
過去の相続での障害者控除の使用と今回の控除額
障害者が過去の相続でも障害者控除を受けたことがある場合、今回の控除額は以下のように計算します。
今回の控除額 = 本来の控除額 − 過去の相続で使用した控除額
例えば、今回の障害者控除の本来の額が600万円で、前回の相続で150万円を使用していた場合、今回使える控除額は600万円 − 150万円 = 450万円となります。
障害者控除の申告手続き・必要書類
障害者控除を受けるためには、相続税の申告書に控除を受ける旨を記載し、以下の書類を添付する必要があります。
- 障害者手帳の写し(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳など)
- 市区町村長・福祉事務所長による認定書(65歳以上の認定を受けた方の場合)
- 戦傷病者手帳の写し(該当する場合)
- 扶養義務者も控除を受ける場合は、各人の控除額の配分を記載した書類
障害者手帳の等級によって「一般障害者」「特別障害者」のどちらに該当するかが変わりますので、手帳の等級を必ず確認してください。
未申告でも申告期限後に適用できる場合がある
相続税の申告後に障害者控除の適用を失念していたと気づいた場合でも、更正の請求(申告期限から5年以内)によって控除を受け取れる可能性があります。障害者控除の適用を失念していた場合は、早急に税理士へ相談することをお勧めします。
未成年者控除との違い
障害者控除と混同しやすいものとして「未成年者控除」があります。両者の違いは以下のとおりです。
| 項目 | 障害者控除 | 未成年者控除 |
|---|---|---|
| 対象者 | 85歳未満の障害者(法定相続人) | 18歳未満の法定相続人 |
| 控除額(年額) | 一般:10万円、特別:20万円 | 10万円 |
| 計算基準 | 85歳までの年数 | 18歳までの年数 |
| 控除しきれない場合 | 扶養義務者の税額から控除可 | 扶養義務者の税額から控除可 |
18歳未満で障害者である場合は、未成年者控除と障害者控除の両方を適用することができます。
まとめ
相続税の障害者控除は、障害を持つ相続人の相続税額を直接差し引くことができる強力な税額控除です。一般障害者で10万円×年数、特別障害者で20万円×年数の控除が受けられ、控除しきれない分は扶養義務者の税額から差し引くことができます。
障害者手帳の等級の確認・申告書への記載・必要書類の添付が必要ですので、相続税申告の際は必ず確認してください。申告後に適用を失念していた場合でも、更正の請求によって取り戻せる可能性があります。当ラボでは相続税申告・障害者控除に詳しい専門家が無料相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。


