電子マネー・デジタル資産の相続税|Suica・PayPay・仮想通貨など評価方法と注意点を解説

電子マネー・デジタル資産の相続とは

近年、キャッシュレス決済の普及により、Suica・PASMO・PayPay・楽天Edy・nanaco・WAONなどの電子マネーや、ポイント、仮想通貨(暗号資産)、NFTなどのデジタル資産を保有する人が増えています。被相続人(亡くなった方)がこれらを保有していた場合、相続税や相続手続きにおいてどのように扱われるのか、多くの方が疑問に思うところです。

本記事では、電子マネー・デジタル資産の相続税上の取り扱いと、手続き上の注意点を解説します。

電子マネーの種類と法的性質

電子マネーには大きく分けて「プリペイド型(前払い式)」と「ポストペイ型(後払い式)」があります。また、サーバー型(残高をサーバーで管理)とIC型(ICチップに残高を記録)に分類されることもあります。

主な電子マネーの分類として、交通系(Suica・PASMOなど)はIC型のプリペイド型が主流で、流通系(nanaco・WAON・楽天Edyなど)も同様です。QRコード決済系(PayPay・楽天Pay・d払い・au PAYなど)はサーバー型のプリペイド型が中心です。法的には、電子マネーの残高は「前払式支払手段」として資金決済法の規制を受けており、利用者の財産として保護されています。

電子マネー残高の相続税上の取り扱い

電子マネーの残高は、被相続人の財産(相続財産)として相続税の課税対象となります。相続税法上の評価額は「相続開始時点(死亡時点)の残高」となります。

評価方法

電子マネーの残高の評価額は、残高そのものの金額(額面)です。例えば、Suicaの残高が3万円であれば、相続財産として3万円が計上されます。

申告の実務

電子マネー残高は比較的少額のケースが多いですが、申告漏れがないよう注意が必要です。被相続人のカードや端末に登録された電子マネー、スマートフォン内のQRコード決済アプリの残高なども確認が必要です。

払い戻しの可否

電子マネーによっては、死亡後の残高の払い戻し(現金化)ができないものがあります。電子マネーの利用規約によって取り扱いが異なるため、各サービスの規約を確認する必要があります。一般的に、Suicaなど交通系ICカードは本人確認の上で払い戻しが可能なケースが多いですが、QRコード決済は規約上の制限があることが多いです。

主要な電子マネー・QR決済の相続手続き

Suica・PASMO(交通系ICカード)

Suicaは、JR東日本の窓口で相続人であることを証明する書類(戸籍謄本・死亡診断書など)を提出することで、残高の払い戻し手続きができます。ただし、モバイルSuicaの場合はスマートフォンのロック解除が必要なため、パスワードが不明な場合は手続きが困難になります。

PayPay・楽天Pay・d払いなどのQRコード決済

多くのQRコード決済サービスでは、利用規約上「本人のみが利用可能」とされており、死亡した場合の残高の相続・払い戻しについて明確な規定がないケースもあります。各サービスの問い合わせ窓口に確認が必要です。残高が相続できない場合でも、相続税の申告上は財産として計上する必要があります。

nanaco・WAON・楽天Edy

これらの流通系電子マネーも、残高の払い戻し・相続手続きはサービスによって異なります。一般的に少額の場合が多いですが、残高の確認と申告は必要です。

ポイント(マイレージ・各種ポイント)の相続税

楽天ポイント・Tポイント・dポイント・ANAマイル・JALマイルなどのポイント・マイレージについても相続財産として申告が必要かどうかが問題となります。

現時点では、ポイントの相続税上の取り扱いに明確な規定はなく、実務上はポイントは「財産的価値」を有するものの、多くの場合は「現金と同等の財産」とは扱われず、申告義務が生じないケースも多いです。ただし、多額のポイントやマイレージを保有していた場合は、税務署の判断に委ねられる可能性もあり、税理士に相談することが望ましいです。なお、ポイントの承継(相続)については、各サービスの規約による制限があり、多くの場合は相続人への移行ができないか、手続きが非常に煩雑です。

仮想通貨(暗号資産)の相続税

ビットコイン・イーサリアム・その他の仮想通貨(暗号資産)は、相続税の課税対象となる「財産」に該当します。

評価方法

仮想通貨の相続税評価額は、相続開始時(死亡時)における「活発な市場が存在する場合」はその時点の取引所レートによる時価です。国税庁の通達では、「相続開始時における活発な市場における取引価格」(例:死亡日の取引所終値)が評価額とされます。

申告上の注意点

仮想通貨の保有状況は、取引所のアカウント情報(IDとパスワード)がわからないと確認できません。被相続人がパスワードや秘密鍵を適切に管理・記録していなかった場合、相続手続きが困難になります。エンディングノートなどに記録しておくことが重要です。また、被相続人のスマートフォンやPCに保存された「ハードウェアウォレット」「ソフトウェアウォレット」内の仮想通貨も相続財産となりますが、秘密鍵がわからない場合は事実上アクセス不能となります。

NFT・デジタルコンテンツの相続

NFT(非代替性トークン)や有料サブスクリプション、デジタルコンテンツ(音楽・電子書籍・ゲームアイテムなど)も財産的価値を持つ場合があります。ただし、これらの相続税上の取り扱いは現時点では明確な規定がなく、個別の判断が必要です。特に価値あるNFTを保有している場合は、税理士への相談が不可欠です。

デジタル資産の相続対策・生前準備

電子マネーやデジタル資産をスムーズに相続するためには、生前の準備が重要です。エンディングノートや「デジタル遺産リスト」を作成し、保有する電子マネー・仮想通貨・各種アカウントのIDとパスワード、残高の目安などを記録しておきましょう。また、重要なアカウント情報は信頼できる場所に保管し、家族に伝えておくことが大切です。なお、アカウント情報を記載したメモは、セキュリティリスクにもなるため、保管方法には十分注意が必要です。

まとめ

電子マネーの残高・仮想通貨・ポイントなどのデジタル資産は、相続税の申告において見落とされがちな財産です。残高が少額であっても、申告漏れは税務調査の対象となり得ます。相続発生後は、被相続人が保有していた電子マネーやデジタル資産を速やかに把握し、適切に申告することが重要です。また、仮想通貨など高額のデジタル資産については、必ず税理士に相談するようにしましょう。

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