無償返還の届出が提出された土地の評価|相続税・地代・借地権割合への影響をわかりやすく解説

相続や贈与が発生した際に、「無償返還の届出が提出された土地」はどのように評価されるのでしょうか。無償返還の届出がある土地は、通常の借地権付き底地とは評価方法が異なり、相続税・地代・借地権割合への影響も独特です。本記事では、無償返還の届出がある土地の相続税評価の仕組みをわかりやすく解説します。

無償返還の届出とは何か

無償返還の届出とは、個人が自己の所有する土地を法人(同族会社など)に貸し付ける際に、将来その土地を無償で返還することを約束する旨を税務署に届け出る制度です(法人税基本通達13-1-14)。この届出があることで、土地の貸し借りに「借地権」が発生しないものとして税務上扱われます。

本来、土地を法人に貸す場合、権利金(借地権の対価)の授受がなければ、その権利金相当額を「経済的利益の供与」として法人に対して寄附したものとみなす税務処理が必要です。しかし無償返還の届出を提出することで、この問題を回避することができます。

地主(個人)側の相続税評価

自用地評価額の80%で評価される

無償返還の届出が提出されている土地を地主(個人)が相続した場合、その土地の相続税評価額は「自用地評価額(路線価方式または倍率方式で算出した評価額)×80%」となります。この20%の評価減は、土地が法人に貸し付けられており、地主が自由に使用・処分できないという「利用制限」を反映したものです。

この20%評価減は、通常の底地評価(借地権割合が設定されている場合:例えば自用地評価額×(1-借地権割合60%)=40%評価)とは異なります。無償返還の届出がある場合は「借地権が発生しない」ため、借地権割合を控除する必要はなく、一律80%評価となります。

評価額の計算例

例えば、路線価方式による自用地評価額が5,000万円の土地に無償返還の届出がある場合、相続税評価額は5,000万円×80%=4,000万円となります。通常の借地権割合60%が設定されている地域であれば、底地の評価額は5,000万円×40%=2,000万円となるため、無償返還の届出がある場合の方が底地の評価額が高くなります。

借地人(法人)側の税務上の取り扱い

借地権は計上されない

無償返還の届出がある場合、借地人(法人)側には借地権が発生しないものとして扱われます。そのため、法人の貸借対照表(資産の部)に借地権を計上する必要はありません。法人税・法人の純資産価額の計算においても、借地権は資産として認識されません。

同族会社の株式評価への影響

借地人が同族会社の場合、その会社の非上場株式(自社株)の相続税評価に影響します。純資産価額方式で評価する場合、借地権は資産として計上されないため、株式の評価額には借地権分の上乗せはありません。一方、地主(個人)側の土地評価が80%となることで、同族会社の株主(地主の親族等)の相続税全体の計算においてもバランスを考える必要があります。

地代と相続税評価の関係

地代の水準で評価方法が変わる

無償返還の届出がある場合でも、地代の水準によって評価方法に影響が出ることがあります。地代が「相当の地代」(おおむね自用地評価額の年6%程度)に達している場合、一定の条件のもとで評価が変わる可能性があります。地代が固定資産税相当額以下(無償または低額)の場合は「使用貸借」として扱われ、評価上の区分が変わることがあります。実務上は固定資産税の2〜3倍程度の地代(通常の地代)を設定しているケースが多く、この場合に「自用地評価額×80%」の評価が適用されます。

使用貸借の場合の評価

無償返還の届出があっても、地代の授受がなく「使用貸借」として扱われる場合、地主の土地の相続税評価は「自用地評価額(100%)」となります。つまり、使用貸借では評価減の恩恵が受けられません。無償返還の届出の効果(80%評価)を維持するためには、適切な地代の授受が必要です。

借地権割合への影響

無償返還の届出がある土地では、路線価図に記載されている借地権割合(A〜Gの記号で表示)は適用されません。通常の借地権付き底地では「底地価格=自用地評価額×(1-借地権割合)」で計算しますが、無償返還の届出がある場合は一律80%評価となり、借地権割合は参照しません。ただし、路線価の閲覧や土地の価値把握においては引き続き参考情報として活用できます。

相続対策における活用と注意点

活用のメリット

無償返還の届出を活用することで、地主個人の土地の相続税評価を80%に引き下げることができ、相続税の節税効果があります。また借地権を発生させないため、法人の自社株評価への影響を抑えることができます。さらに権利金の授受がなくても税務リスクを回避できるため、同族会社への土地貸付を円滑に行えます。

注意すべきリスク

無償返還の届出には、いくつかの注意すべきリスクもあります。底地の評価額が自用地の80%と比較的高いため、通常の借地権付き底地(40〜50%評価)に比べると相続税の節税効果は限定的です。また将来的に底地を売却する場合、市場価格は自用地の50〜70%程度になることが多く、相続税評価額と実際の売却価格にギャップが生じることがあります。さらに届出の要件を満たさなくなった場合(地代を無償にした場合など)、税務上の取り扱いが変わるリスクがあります。

まとめ

無償返還の届出が提出された土地の相続税評価は、地主(個人)側では「自用地評価額×80%」となります。借地権は発生しないため、借地権割合は適用されず、借地人(法人)の純資産価額にも借地権は計上されません。地代の水準によって評価が変わる可能性もあるため、適切な地代の設定と届出の維持が重要です。相続対策として無償返還の届出を活用する場合は、税理士などの専門家に相談の上、メリット・デメリットを十分に検討することをお勧めします。

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