区分マンション評価の改正|2024年1月からの新評価方式と相続税への影響
区分マンションの相続税評価が変わった背景
2024年1月1日以降の相続・贈与から、居住用の区分マンション(分譲マンションの一室)の相続税評価方法が大きく変わりました。この改正は、従来の評価方式による「時価と評価額の乖離」を是正するために行われたものです。
従来の評価方式では、区分マンションの相続税評価額は時価(市場価格)の10〜30%程度に抑えられるケースも多く、特にタワーマンションを中心に節税目的での購入が急増していました。この状況が「不公平な課税」として問題視され、国税庁が評価方法の見直しに踏み切った経緯があります。
改正前の評価方法(従来方式)
改正前は、区分マンションも一般の不動産と同様に以下の方法で評価されていました。
- 土地(敷地利用権):路線価 × 地積 × 持分割合
- 建物:固定資産税評価額
この方式では、高層階・高価格帯の区分マンションほど、時価と相続税評価額の差が大きくなる傾向がありました。たとえば時価1億円のタワマンが路線価評価で2,000〜3,000万円になることも珍しくなく、節税効果が著しく大きいと批判されていました。
改正後の評価方法(2024年1月〜)
国税庁は2023年9月に「居住用区分所有財産の評価に関する通達」を公表し、2024年1月1日以降の相続・贈与に適用することを発表しました。
新評価方式の基本的な仕組み
新方式では「評価乖離率」という指標を計算し、従来の評価額が時価を大きく下回っている場合に評価額を引き上げます。
評価乖離率の計算に使う要素:
- 築年数(築年数が古いほど評価乖離率は下がる)
- 総階数(建物の総階数が高いほど評価乖離率は上がる)
- 所在階(高層階ほど評価乖離率は上がる)
- 敷地持分狭小度(1戸あたりの敷地持分が小さいほど評価乖離率は上がる)
評価乖離率が一定の閾値(1.67以上)を超える場合、相続税評価額を「時価の60%」を下限として算出します。
評価額の計算イメージ
| 区分 | 従来の評価額 | 新評価額(概算) |
|---|---|---|
| 低層・古い区分マンション | 時価の70〜80%程度 | ほぼ変わらず |
| 中高層・比較的新しいマンション | 時価の40〜60%程度 | 時価の60%に引き上げ |
| タワーマンション(高層階) | 時価の10〜30%程度 | 時価の60%前後に大幅引き上げ |
改正の影響を受けやすいケース
①タワーマンションの高層階を相続する場合
従来は大幅な評価減が期待できたタワーマンション節税ですが、改正後は評価額が時価の60%程度まで引き上げられます。節税効果は大幅に縮小しています。
②相続税対策目的で購入した区分マンション
節税目的で購入した区分マンションに対しては、改正評価方式のほか、総則6項による時価課税のリスクも依然として残っています。評価額の引き上げだけでなく、時価課税リスクにも注意が必要です。
③贈与も対象
この改正は相続だけでなく贈与(暦年贈与・相続時精算課税)にも適用されます。区分マンションを贈与する場合も、新評価方式で評価額が算定されます。
改正後も有効な対策
①一棟アパート・マンションへの切り替え
新評価ルールは「居住用区分所有財産」が対象です。一棟のアパートや事業用不動産は引き続き従来の評価方式(路線価・固定資産税評価額)が適用されます。区分マンションから一棟物件への切り替えを検討する動きも出てきています。
②小規模宅地等の特例の活用
自宅(居住用)として使っている区分マンションを配偶者や同居親族が相続する場合、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地:330㎡まで80%減額)は改正後も引き続き適用可能です。
③生前贈与・暦年贈与の活用
区分マンションの評価が上がったとはいえ、相続より贈与のほうが有利な場合もあります。贈与税の基礎控除(年110万円)や相続時精算課税制度を組み合わせた戦略は引き続き有効です。
④令和8年度税制改正との関係
2024年1月の通達改正(区分マンション評価見直し)とは別に、令和7年12月26日閣議決定の令和8年度税制改正大綱では、不動産特定共同事業契約(不特法)型や信託受益権型の不動産小口化商品については、取得時期にかかわらず時価評価を適用することとされました(令和9年1月1日以後の相続・贈与から適用)。
また、課税時期前5年以内に取得した貸付用不動産(区分マンションを含む)も時価評価の対象となります。区分マンションを相続税対策として活用する際は、2024年通達改正と令和8年度税制改正の両方を踏まえた検討が必要です。
まとめ:2024年改正で何が変わったか
2024年1月からの区分マンション評価の改正により、タワーマンションを中心とした「マンション節税」の効果は大幅に縮小しました。特に高層階の区分マンションは評価額が時価の60%程度まで引き上げられ、従来ほどの節税効果は期待できません。
一方、自宅として使っている区分マンションへの小規模宅地特例は引き続き有効であり、一棟物件の評価方式も変わっていません。最新の税制を正確に把握し、専門家と連携した相続税対策の見直しが重要です。当ラボでは相続税に精通した専門家が個別のご相談に対応しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


