圧縮記帳とは?仕組み・対象資産・会計処理・事業承継との関係をわかりやすく解説
「補助金をもらったら税金がかかる?」「保険金を受け取って建物を建て直したら課税される?」こうした疑問に答えるのが圧縮記帳という制度です。中小企業の経営者や不動産オーナーが知っておくべき税務処理について、わかりやすく解説します。
圧縮記帳とは?
圧縮記帳とは、一定の収入(補助金・保険金・交換差益等)を使って固定資産を取得した場合に、その収入に対する法人税・所得税の課税を将来に繰り延べるための制度です(租税特別措置法・法人税法42条〜50条)。
税金を「免除」するのではなく、固定資産の取得価額を減額(圧縮)することで課税を先送りする仕組みです。将来、その資産を売却したり、減価償却が終わった時点で課税が追いつく形になります。
| 項目 | 圧縮記帳なし | 圧縮記帳あり |
|---|---|---|
| 補助金収入 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 課税所得(当期) | 1,000万円(全額課税) | ほぼゼロ(圧縮損で相殺) |
| 固定資産の取得価額 | 1,000万円 | 圧縮後の価額(例:ゼロ〜一部) |
| 将来の減価償却・売却益 | 通常通り | 減価償却が減る→将来の所得が増える(後払いで課税) |
圧縮記帳が適用できる主なケース
| 種類 | 根拠条文 | 対象となるケース |
|---|---|---|
| 国庫補助金等 | 法法42条 | 設備投資補助金・IT補助金・ものづくり補助金などを受領し固定資産を購入した場合 |
| 工事負担金 | 法法45条 | 電力会社・ガス会社等から受け取る工事負担金で設備を取得した場合 |
| 保険差益 | 法法47条 | 火災・水害等で建物が滅失し、受け取った保険金で新たに建物等を取得した場合 |
| 交換差益 | 法法50条 | 同種の固定資産を交換した際に生じた差益で代替資産を取得した場合(等価交換にも関連) |
| 収用補償金等 | 措法64条等 | 公共事業による土地収用・建物撤去で受け取った補償金で代替資産を取得した場合 |
圧縮記帳の2つの処理方法
圧縮記帳の会計処理には直接減額法と積立金方式の2種類があります。
| 項目 | 直接減額法 | 積立金方式 |
|---|---|---|
| 帳簿上の処理 | 固定資産の取得価額を直接減額 (圧縮損を計上) |
固定資産の取得価額はそのまま。 圧縮積立金(純資産)を積み立てる |
| B/S(貸借対照表) | 固定資産の計上額が減少する | 固定資産はそのまま。純資産に積立金が計上 |
| 減価償却費 | 圧縮後の価額が基準→ 以後の減価償却額が少なくなる |
取得価額のまま償却→ 減価償却費は変わらない |
| 利益への影響 | 当期の利益が圧縮損で減少 | 積立金の取崩で毎期均等に課税 |
| 主な利用場面 | 中小企業で多く使われる(簡便) | 大企業・会計上の資産価額を正確に保ちたい場合 |
直接減額法の仕訳例(補助金1,000万円→設備1,000万円購入)
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 補助金の受領 | 現金預金 1,000万円 | 国庫補助金収入 1,000万円 |
| 設備の購入 | 機械装置 1,000万円 | 現金預金 1,000万円 |
| 圧縮記帳の処理 | 固定資産圧縮損 1,000万円 | 機械装置 1,000万円 |
→ 機械装置の帳簿価額がゼロになり、補助金収入と圧縮損が相殺されて課税所得がゼロに
圧縮記帳の注意点・よくある誤解
- ▲ 課税の免除ではなく繰り延べ→将来の減価償却費が減るため、長期的には同じ課税額になる
- ▲ 確定申告書に圧縮記帳の明細書を添付しないと適用できない(自動適用ではない)
- ▲ 補助金の交付決定通知を受け取ったタイミングが収益認識時点→受け取った期に計上が必要
- ▲ 個人(所得税)にも適用あり(収用・保険差益等)→不動産オーナーにも関係する場面あり
- ▲ 中小企業の補助金(ものづくり補助金・IT導入補助金等)は全額が圧縮記帳の対象となり得る→節税効果大
事業承継・相続との関係
圧縮記帳が行われた固定資産は、帳簿上の価額が低く(圧縮後の価額)なっていますが、相続税や事業承継の評価では時価ベースで評価されることがあります。特に法人が保有する圧縮記帳済みの不動産・設備を相続・事業承継する際は、以下の点に注意が必要です。
- 純資産価額方式による自社株評価では、保有資産の時価が評価額に影響する
- 圧縮記帳により帳簿価額が低くても、相続税評価(路線価・固定資産税評価額)は変わらない
- 将来の含み益(圧縮した分)が法人内に残っており、株価評価に影響する場合がある
まとめ
圧縮記帳は、補助金・保険金・収用補償金などを受け取った際に、当期の税負担を軽減できる重要な制度です。ただし課税の先送りにすぎず、将来的な税負担との兼ね合いを長期的に見た計画が必要です。また、確定申告書への明細書添付が要件となっているため、受け取りの翌年以降に「使えばよかった」とならないよう、補助金取得時点で税理士に相談することが重要です。
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