遺言書があったのに、むしろ揉めた──伊藤家の「完璧なはずの遺言書」大誤算
※本記事は、相続で起こりやすいトラブルを分かりやすく解説するための架空事例です。実在の人物・団体・事案とは関係ありません。
「遺言書があるから大丈夫」──そう信じていた伊藤家に、まさかの展開が
父・伊藤正雄(享年81歳)は、几帳面な人だった。生前から「遺言書は書いてある」と家族に伝え、法的手続きも済ませた公正証書遺言まで用意していた。
遺族は「これで揉めることはないな」と安心していた。
しかし——遺言書の内容を見た長男・誠一(56歳)の表情が、一瞬にして曇った。
「……なんで次男の弘樹だけ、こんなにもらうんだ?」
遺言書の内容がこちら
| 遺産 | 配分 |
|---|---|
| 自宅(評価額4,000万円) | 次男・弘樹に全額 |
| 預金2,000万円 | 長男・誠一に全額 |
| 投資信託500万円 | 記載なし…… |
遺言書には「投資信託」の記載がなかった。父が亡くなる2年前に新たに購入したものだ。
さらに、誠一は計算してみた。自宅4,000万円に対して預金2,000万円では、差額2,000万円分の不公平がある。法律上保障された「遺留分」を侵害していないか?
長男・誠一の怒りポイント3つ
- 遺言書に書かれていない財産(投資信託)の分け方で揉めた
- 不動産と現金で1,500万円の格差があり、遺留分を侵害している疑い
- 「なぜ弘樹が実家を? 俺の方が長く介護を手伝ったのに」という不満
遺言書があっても揉める理由
理由① 遺言書に書かれていない財産がある
遺言書作成後に取得した財産(新たな預金口座、投資信託など)は、遺言書に記載がない「漏れた財産」になります。この部分は改めて遺産分割協議が必要になり、そこで揉めることがあります。
理由② 遺留分を侵害している
遺言書は有効でも、相続人には「遺留分」という最低保障があります。侵害された相続人は遺留分侵害額請求ができます。遺言書があっても、この権利は消えません。
理由③ 感情的な不満が残る
法的に問題がなくても「なぜ弟だけ?」という感情は消えません。遺言書に「付言事項」(遺言者の気持ちや理由を書いた部分)がなければ、受け取った側は「なぜ?」と疑問を持ち続けます。
完璧な遺言書のチェックリスト
- ✅ 全財産を網羅している(口座番号・不動産の地番まで特定)
- ✅ 遺留分を計算して分配している
- ✅ 「付言事項」で分配の理由・気持ちを伝えている
- ✅ 定期的に見直して、財産の増減を反映している
- ✅ 遺言執行者を指定している
伊藤家のその後
投資信託は兄弟で折半することで何とか決着。ただし誠一が遺留分侵害額請求を正式に申し立てたため、弘樹は後日、一定額を現金で支払うことに。兄弟の関係は……「年賀状だけは送り合う仲」になったそうです。
まとめ:遺言書は「あれば安心」ではない
- 遺言書後に増えた財産は「漏れ」になりやすい
- 遺留分の計算なしに書いた遺言書は請求リスクがある
- 付言事項で「気持ち」を伝えると感情的な揉め事を減らせる
- 遺言書は定期的に見直すことが大切


