誰も住まない実家を相続したら、負担だけが残ってしまったケース
※本記事は、相続で起こりやすいトラブルを分かりやすく解説するための架空事例です。実在の人物・団体・事案とは関係ありません。
「実家なんていらないけど、捨てるわけにもいかない……」
都内で暮らす中村さん夫婦(50代)は、地方の母の実家を相続しました。築45年の木造一戸建て、最寄り駅から車で30分。売ろうにも買い手がつかず、かといって誰も住む予定がない。毎年の固定資産税は8万円、草刈りや清掃のために年に数回帰省する交通費も馬鹿になりません。
なぜトラブルになったのか
中村さんは「とりあえず相続しておこう」と判断しました。しかし相続から5年が経過した今、家は傷み、近隣からは「庭の雑草が迷惑」とクレームが来るようになりました。市から「特定空き家」に指定されると固定資産税の優遇(住宅用地特例)が外れ、税額が最大6倍になるリスクも。
何が問題だったのか
① 相続放棄という選択肢を知らなかった
相続開始から3か月以内に家庭裁判所へ申述すれば「相続放棄」が可能です。ただし放棄しても、管理義務が完全になくなるわけではありません(民法上、次の管理者が決まるまでの保存義務あり)。また、2023年施行の「相続土地国庫帰属制度」を使えば、一定の条件のもと国に土地を引き取ってもらうことも可能になりました。
② 空き家は「負動産」になりうる
地方の古い家は売却価格がゼロ、あるいはマイナス(解体費用が必要)になるケースもあります。「資産」のつもりが「負債」になっている現実を、相続前に把握しておく必要があります。
③ 「特定空き家」指定のリスク
適切に管理されていない空き家は、自治体から「特定空き家」に指定される場合があります。指定されると、固定資産税の住宅用地特例(課税標準が1/6になる特例)が適用されなくなり、税負担が大幅に増加します。最終的には行政代執行による強制解体もあり得ます。
実務上どう考えるべきか
空き家を相続した場合は、①売却、②賃貸、③更地にして売却、④相続土地国庫帰属制度の活用、の4つの選択肢を比較検討しましょう。売れない場合も「管理コストを最小化する方法」を不動産会社や専門家に相談することが重要です。
事前にできる対策
- 親が元気なうちに「実家をどうするか」を家族で話し合い、売却・活用方針を決めておく
- 相続発生前から不動産会社に査定を依頼し、売却の可能性を確認する
- 相続放棄や国庫帰属制度など、「受け取らない選択肢」も視野に入れる
- 固定資産税・修繕費・解体費用の概算を把握しておく
まとめ
「実家を捨てるなんてかわいそう」という感情は理解できます。しかし現実的なコストを把握せずに相続すると、じわじわと家族の負担になります。空き家の問題は先送りにするほど選択肢が狭まります。早めの相談と決断が、家族全員を守ることにつながります。


