不動産小口化商品の相続税評価|令和8年度税制改正の内容と影響を解説

不動産小口化商品とは?

不動産小口化商品とは、一棟のビルやマンションなどの不動産を小口化して複数の投資家が共同で保有できるようにした金融商品です。数百万円程度の少額から優良不動産に投資でき、相続税対策としても注目されてきました。

代表的な商品として「任意組合型」「匿名組合型」「不動産特定共同事業契約型(不特法型)」などがあります。このうち相続税対策に有効とされてきたのは、主に「任意組合型」の不動産小口化商品です。

なぜ相続税対策として活用されてきたのか

任意組合型の不動産小口化商品は、投資家が実際の不動産の共有持分を保有する形をとります。このため、相続発生時には現物の不動産と同様に「路線価評価」「固定資産税評価額」を用いて相続税評価額が算定され、現金で保有した場合と比べて評価額を大幅に圧縮できると期待されていました。

さらに、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地:200㎡まで50%減額)が適用できる可能性があるとして、販売会社が相続税対策として積極的に販売を行ってきた経緯があります。

令和8年度税制改正による大きな変更点

令和7年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱において、「相続税等の財産評価の適正化」として、不動産小口化商品を直接対象とする重要な改正が盛り込まれました。改正は令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価に適用されます。

①取得後5年以内の貸付用不動産は時価評価へ

被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築した一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額(時価)に相当する金額によって評価することとされました。

ただし、課税上の弊害がない限り、取得価額をもとに地価の変動等を考慮して計算した価額の80%に相当する金額によって評価することができます。従来の路線価評価と比べ、評価額が大幅に引き上げられることになります。

②不動産特定共同事業契約・信託受益権型は取得時期を問わず時価評価へ

不動産特定共同事業契約(不特法)または信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとされました。

評価額は、事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、売買実例価額、または定期報告書等に記載された不動産価格等を参酌して求めた金額によって評価します。これにより、不動産小口化商品(特に不特法型・信託型)を活用した相続税節税スキームは、事実上封じられることになります。

改正の施行時期

項目内容
大綱決定日令和7年12月26日(閣議決定)
適用開始令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価から適用
対象①課税時期前5年以内に取得した貸付用不動産 → 時価(または取得価額×80%)で評価
対象②不特法契約・信託受益権型の不動産小口化商品 → 取得時期問わず時価評価

商品タイプ別の影響

商品タイプ改正後の評価方法節税効果への影響
任意組合型(5年超保有)路線価・固定資産税評価(従来通り)従来の節税効果は維持される可能性あり
任意組合型(5年以内取得)取得価額×80%(時価ベース)節税効果が大幅に縮小
不特法契約型・信託受益権型取得時期問わず時価評価節税スキームとしての活用は事実上困難
匿名組合型出資金額(時価)もともと節税効果なし(変更なし)

令和8年度改正以前から続く課税強化の流れ

2022年最高裁判決(タワマン事件)と総則6項

2022年の最高裁判決(タワーマンション事件)を受け、国税庁は財産評価基本通達「総則6項」を根拠に、節税目的で購入された不動産・小口化商品に対して積極的に時価課税を行う姿勢を強めてきました。令和8年度改正はこの流れを制度として明文化したものといえます。

2024年1月の区分マンション評価見直し

2024年1月1日以降の相続・贈与から、区分マンションの相続税評価方法が見直され(居住用区分所有財産の評価通達改正)、時価との乖離が大きい物件については評価額が引き上げられています。これは令和8年度改正とは別の措置であり、通達改正による対応です。

今後の不動産小口化商品活用のポイント

①任意組合型でも5年超保有が前提に

令和8年度改正後は、任意組合型であっても課税時期前5年以内に取得した貸付用不動産は時価評価の対象となります。相続が近い方が新たに取得しても節税効果は期待できません。早期に計画を立て、長期保有を前提とした検討が必要です。

②不特法型・信託型は節税目的での活用が困難に

不動産特定共同事業契約型・信託受益権型の商品は、取得時期にかかわらず時価評価が適用されるため、相続税の節税目的での活用は事実上困難になりました。投資としての収益性・流動性を主軸に評価することが重要です。

③専門家への相談が不可欠

令和8年度改正の適用は令和9年1月1日以後であり、現在保有している不動産小口化商品への影響・対応策は個別の状況によって異なります。必ず相続税に詳しい税理士に相談し、最新の税務上のリスクを確認することを強くお勧めします。

まとめ

令和8年度税制改正(令和7年12月26日閣議決定、令和9年1月1日適用開始)により、不動産小口化商品を使った相続税対策は大きく制限されることになりました。特に不特法型・信託型は取得時期にかかわらず時価評価が適用され、節税スキームとしての活用は事実上困難です。

一方、任意組合型でも5年超保有であれば従来の評価方法が維持される可能性があります。最新の税制を正確に把握し、専門家と連携した資産計画の見直しが急務です。当ラボでは相続税に精通した専門家が個別のご相談に対応しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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