遺言書作成の失敗あるある10選|無効・トラブルにならないために
遺言書は、相続をめぐる争いを防ぎ、自分の意思を確実に実現するための大切な書類です。しかし、「せっかく書いたのに無効だった」「内容の不備でトラブルになった」というケースが後を絶ちません。本記事では、実際に相談現場でよく見られる遺言書作成の失敗事例を10つ厳選し、その原因と対策をわかりやすく解説します。遺言書を作成中の方も、これから作成を検討している方も、ぜひ参考にしてください。
失敗① 全文を自分で書かなかった
自筆証書遺言の最大の落とし穴が「全文自書」の要件です。遺言者本人が一字一句すべて手書きしなければなりません。「パソコンで書いて印刷した」「代筆してもらった」という遺言書は、すべて無効です。
対策:財産目録以外はすべて自筆で書きましょう。財産目録のみパソコン作成や通帳コピーの添付が認められていますが、その場合も各ページに署名・押印が必要です。
失敗② 日付を「〇〇年〇月吉日」と書いた
「令和〇年〇月吉日」のような書き方は、日付が特定できないとして無効とされます。複数の遺言書が存在するとき、日付の前後で有効なものが決まるため、正確な日付の記載は必須です。
対策:「令和〇年〇月〇日」と年・月・日を必ず明記してください。作成した日付を正確に書くことが重要です。
失敗③ 押印を忘れた・認印しか使わなかった
押印がない遺言書は無効です。法律上は認印でも有効とされていますが、「本当に本人が作成したのか」という疑義が生じやすく、トラブルの原因になります。
対策:必ず押印し、できれば実印を使用しましょう。実印であれば印鑑証明書との照合ができるため、遺言書の信頼性が高まります。
失敗④ 財産の特定が曖昧だった
「預金は長男に」「土地は次男に」という書き方では、どの預金口座なのか、どの土地なのかが特定できずトラブルになります。特に複数の不動産や口座がある場合は注意が必要です。
対策:不動産は登記事項証明書の記載通りに所在・地番・家屋番号を記載し、預貯金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号まで明記しましょう。
失敗⑤ 相続人以外への遺贈を書いたが遺言執行者を指定しなかった
相続人以外の第三者(友人・団体など)に財産を遺贈する場合、相続人の協力が得られないと手続きが進まないことがあります。遺言執行者がいないと、遺贈の実現が困難になるケースがあります。
対策:遺贈を含む遺言書には、必ず「遺言執行者」を指定しておきましょう。信頼できる人物や司法書士・弁護士を指定することで、スムーズな執行が可能になります。
失敗⑥ 遺留分を無視した内容にしてしまった
「全財産を特定の一人に」という遺言は法的には有効ですが、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けることがあります。遺留分は配偶者・子・親に保障された最低限の相続割合であり、これを無視した遺言は死後のトラブルを招きます。
対策:各相続人の遺留分(法定相続分の1/2または1/3)を考慮した内容にするか、付言事項でその理由を丁寧に説明しておくことが大切です。事前に専門家に相談して、トラブルを予防しましょう。
失敗⑦ 作成後に書き直したが、旧版を処分しなかった
遺言書は複数存在する場合、日付が新しいものが優先されます。しかし、古い遺言書が発見されると「どちらが有効か」という混乱を招き、相続手続きが複雑になります。また、古い遺言書の一部が新しい遺言書と矛盾する場合、矛盾する部分のみ新しい遺言書が優先されます。
対策:遺言書を書き直した場合は、古い遺言書を必ず廃棄(自筆証書の場合は故意に破棄)しておきましょう。法務局の保管制度を利用している場合は、撤回手続きを取ることが必要です。
失敗⑧ 認知症が進んでから作成した
遺言書を作成するには「遺言能力」が必要です。認知症が一定程度進行した状態で作成した遺言書は、「意思能力がなかった」として無効と判断されるリスクがあります。死後に相続人から遺言無効確認訴訟を起こされるケースもあります。
対策:遺言書は元気なうちに作成することが鉄則です。認知症が疑われる状況で作成する場合は、医師の診断書を残す・公正証書遺言にして公証人が意思確認するなど、証拠を残しておくことが重要です。
失敗⑨ 保管場所を誰にも伝えなかった
自宅で保管していた遺言書が、相続発生後に発見されなかったり、相続手続きが終わってから出てきたりするケースがあります。遺言書の存在が知られなければ、せっかくの遺言が活かされません。
対策:信頼できる家族・遺言執行者・士業の専門家に保管場所を伝えておきましょう。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、相続開始後に相続人が照会できる仕組みが整っています。公正証書遺言は公証役場のデータに残るため、紛失の心配がありません。
失敗⑩ 家族への想いや理由を何も書かなかった
法律的には有効な遺言書でも、「なぜこの分け方にしたのか」という理由がないと、不満を持った相続人が争いを起こすことがあります。特定の相続人を優遇したり、一人に財産を集中させる場合、感情的な対立を招きやすくなります。
対策:遺言書の末尾に「付言事項」として、財産の分け方を決めた理由や家族へのメッセージを記しましょう。法的効力はありませんが、遺族の感情を和らげ、遺言内容への理解を深める効果があります。
まとめ:遺言書は「正確に・元気なうちに・専門家と一緒に」
遺言書作成の失敗は、「形式不備による無効」「内容の曖昧さによるトラブル」「準備不足」の3つに大別されます。せっかく作成した遺言書が無効になったり、残された家族が争う原因になってしまっては本末転倒です。
遺言書は元気なうちに、内容を十分に検討したうえで作成することが大切です。自筆証書遺言を作成する場合でも、一度専門家にチェックしてもらうことを強くおすすめします。当事務所では、遺言書の作成サポートから内容のアドバイスまで、丁寧にお手伝いしております。お気軽にご相談ください。


