所有者の違う借地権と底地権の共同売却|メリット・手続き・税務上の注意点を解説
借地権と底地権の共同売却とは
借地権と底地権の共同売却とは、同一の土地について借地権を持つ借地人と、底地権(土地の所有権)を持つ地主が、それぞれの権利をまとめて第三者に売却する手法です。
通常、借地権と底地権は別々の所有者が持つため、それぞれを単独で売却しようとしても買い手が付きにくく、低い価格でしか売れないことが多いです。しかし、両者が協力して「完全所有権」として一括で売却することで、土地の本来の市場価値に近い金額での売却が可能になります。
借地権・底地権をそれぞれ単独で売却する場合の問題点
借地権や底地権を単独で売却する場合、以下のような問題が生じます。
借地権単独売却の問題点
借地権を単独で売却する場合、買主は土地を自由に使えず地代を支払い続ける必要があるため、需要が限られます。また、借地権の売却には原則として地主の承諾が必要であり(借地借家法19条)、地主が承諾しない場合は裁判所への申立てが必要になることもあります。さらに、地主への譲渡承諾料(一般的に借地権価格の10%程度)の支払いも生じます。
底地権単独売却の問題点
底地権を単独で売却する場合、買主は土地の上に借地権者の建物があるため自由に利用できず、収益も地代収入のみに限られます。そのため、底地の市場価値は更地価格と比較して大幅に低くなるのが一般的です(更地価格の20〜30%程度になることも少なくありません)。
共同売却のメリット
借地権と底地権を共同で売却することには、以下のようなメリットがあります。
売却価格の最大化
借地権と底地権をそれぞれ単独で売却した場合の合計額より、共同売却の方が高い価格で売れることが多いです。完全所有権として売却できるため、土地の更地価格に近い金額での売却が期待できます。
売却のしやすさ
完全所有権の土地は買い手が付きやすく、売却期間が短くなる傾向があります。借地権単独の場合に必要な地主の承諾手続きも不要です。
双方にとっての利益
地主・借地人ともに、単独売却より高い売却金額を得られる可能性があります。長年の地代をめぐるトラブルを解消し、権利関係をきれいに整理できるという点でも双方にメリットがあります。
共同売却の手続きの流れ
借地権と底地権の共同売却は、一般的に以下のような流れで進みます。
① 当事者間での合意形成
地主と借地人が共同売却に合意することが最初のステップです。双方が納得できる売却価格や売却後の利益配分(借地権割合・底地割合)について、事前に話し合っておく必要があります。
② 不動産業者への依頼・査定
共同売却に詳しい不動産業者に査定を依頼します。売却後の収益をどのような割合で分配するか(借地権割合・底地割合)についても、不動産業者や専門家に相談しながら決定します。
③ 売買契約の締結
買主が見つかったら、地主・借地人それぞれが売買契約を締結します。契約書には、借地権と底地権の双方の権利が含まれることを明記します。
④ 決済・引渡し
売買代金の受領と同時に、土地の所有権移転登記および借地権の移転(抹消)手続きを行います。
売却代金の配分方法
共同売却後の売却代金は、借地権割合と底地割合に基づいて分配するのが一般的です。
借地権割合は、相続税路線価図に記載されており、地域によって異なります(例:東京都心部では70〜80%、郊外では30〜50%程度)。底地割合は「1 − 借地権割合」で計算されます。
例えば、売却価格が5,000万円で借地権割合が60%の場合、借地権者が3,000万円、地主が2,000万円を受け取ることになります。ただし、実際の配分割合は当事者間の交渉によって決まるため、必ずしも路線価上の借地権割合と一致するわけではありません。
税務上の注意点
共同売却における税務上の注意点を以下に整理します。
譲渡所得税の計算
借地権・底地権の売却によって生じた利益(譲渡所得)には、譲渡所得税・住民税が課されます。所有期間が5年超の長期譲渡所得の場合は税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)、5年以下の短期譲渡所得の場合は39.63%(所得税30.63%+住民税9%)となります。
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使用できますが、実際の取得費が確認できる場合はそちらを使用した方が税負担を抑えられる場合があります。
3,000万円特別控除の適用
居住用財産の借地権を売却する場合、一定の要件を満たせば3,000万円の特別控除(租税特別措置法35条)が適用できる可能性があります。借地権の上に住宅が建っており、その住宅に居住していた場合が対象となります。
消費税の取り扱い
土地(借地権・底地権を含む)の売却は消費税の非課税取引となります。ただし、個人事業者や法人が売却する場合には、消費税の課税売上割合の計算に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
贈与税・みなし贈与への注意
売却代金の配分割合が借地権割合・底地割合から著しく乖離している場合、差額部分が一方から他方への贈与とみなされる可能性があります(相続税法7条)。適切な割合での配分を行い、必要に応じて税理士に相談することが重要です。
共同売却を行う際の注意点
共同売却を成功させるためには、以下の点に注意が必要です。
当事者間の合意が大前提
共同売却は地主と借地人の双方の合意がなければ成立しません。一方が反対している場合は、共同売却ではなく、借地権買取り・底地買取りなど別の方法を検討する必要があります。
専門家への相談
借地権・底地権の取引は権利関係が複雑であるため、不動産業者・税理士・弁護士・司法書士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。特に売却代金の配分方法や税務上の取り扱いについては、税理士への相談が不可欠です。
建物の処理
借地上に建物がある場合、建物の取り扱い(売却するのか、解体するのか)についても事前に決めておく必要があります。建物を解体する場合の費用負担についても当事者間で合意しておくことが重要です。
登記手続き
借地権が登記されている場合と登記されていない場合で、手続きが異なります。未登記の借地権については、借地権の存在を証明する書類(借地契約書等)を整えておく必要があります。
借地権の種類と共同売却への影響
借地権には旧法借地権(借地法に基づくもの)と普通借地権・定期借地権(借地借家法に基づくもの)があり、それぞれ共同売却に際して考慮すべき点が異なります。
旧法借地権や普通借地権は存続期間の更新が可能であり、借地権者の権利が強く保護されています。一方、定期借地権は期間満了後に必ず土地を返還する必要があるため、残存期間によって借地権の価値が異なります。定期借地権付き土地の共同売却では、残存期間を踏まえた適切な価格設定が求められます。
まとめ
借地権と底地権の共同売却は、単独売却と比べて双方が高い売却価格を得られる可能性があり、長年の借地関係を円満に解消できる有効な方法です。
ただし、当事者間の合意形成や売却代金の配分方法の決定、税務上の取り扱いなど、様々な検討事項があります。共同売却を検討する際は、早めに不動産の専門家や税理士に相談することで、スムーズな売却と最適な税務処理を実現することができます。


