相続した株を売ったら二重課税になる?取得費加算の特例で節税する方法
相続で株式(上場株式・非上場株式)を取得した後に売却すると、相続税と譲渡所得税の両方がかかってしまう「二重課税」が問題になることがあります。この問題を解消する「取得費加算の特例」は、相続人が知っておくべき重要な節税制度です。
なぜ「二重課税」が起きるのか?
| 段階 | 課税の内容 |
|---|---|
| ① 相続時 | 相続した株式の評価額に対して相続税が課税される |
| ② 売却時 | 売却益(売却価格−取得費)に対して譲渡所得税(20%)が課税される |
▲ 相続税を払った財産をさらに売って税金を払うと、同じ財産に二重で課税されることになります
具体例:被相続人が100万円で取得した株式が、相続時に1,000万円に値上がりしていた場合、相続人は1,000万円の評価額に対して相続税を払います。その後、1,200万円で売却すると、売却益200万円(1,200万円−1,000万円)だけでなく、理論上は900万円(1,000万円−100万円)の値上がり分にも譲渡所得税が課されます。これが二重課税の問題です。
取得費加算の特例とは?
取得費加算の特例とは、相続した財産を相続税申告期限の翌日から3年以内に売却した場合に、支払った相続税のうち一定額を「取得費」に加算できる制度です。これにより、譲渡所得(売却益)を圧縮し、譲渡所得税を減らすことができます。
- ✓ 対象者:相続・遺贈で財産を取得し、相続税を支払った人
- ✓ 対象財産:相続した土地・建物・株式・ゴルフ会員権など(すべての相続財産が対象)
- ✓ 売却期限:相続税の申告期限翌日から3年以内(相続開始から3年10ヶ月以内が目安)
- ✓ 効果:支払った相続税の一部を取得費に加算 → 譲渡所得が減少 → 税額が減る
取得費に加算できる相続税の計算方法
加算額 = 支払った相続税額 × (売却した財産の相続税評価額 ÷ 相続した財産の合計評価額)
つまり、売却した財産が相続財産全体の中で占める割合に応じた相続税額を、取得費に上乗せできます。
計算例
前提条件
- 相続した財産の合計評価額:1億円
- うち上場株式の評価額:2,000万円
- 支払った相続税の総額:1,500万円
- 株式の売却価格:2,500万円(被相続人の取得費:500万円)
計算
- 加算できる相続税額 = 1,500万円 × (2,000万円 ÷ 1億円)= 300万円
- 取得費(加算後)= 500万円 + 300万円 = 800万円
- 譲渡所得 = 2,500万円 − 800万円 = 1,700万円
- 譲渡所得税(20%)= 340万円
特例なしの場合の税額:(2,500万円−500万円)×20%=400万円
特例適用後の節税額:400万円−340万円 = 60万円の節税
手続き・申告方法
取得費加算の特例は、確定申告(翌年3月15日まで)で申告する必要があります。自動的に適用されるわけではないので注意が必要です。
- 確定申告書(第三表:分離課税用)
- 「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」(国税庁の書式)
- 相続税の申告書のコピー(相続財産の明細が分かるもの)
- 遺産分割協議書または遺言書のコピー
- 売却した財産の売買契約書・仲介手数料の領収書など
取得費加算の特例で特に注意すべきポイント
- ▲ 売却期限(3年以内)を逃すと適用不可→相続開始から計算すると約3年10ヶ月が目安
- ▲ 相続税の申告をしていない(非課税だった)場合は適用できない
- ▲ 配偶者控除などで相続税がゼロになった場合も、「支払った相続税がない」として適用できないケースあり
- ▲ 非上場株式の場合は評価額の計算が複雑なため、専門家への依頼が必須
株式以外にも使える:不動産・ゴルフ会員権も対象
取得費加算の特例は株式だけでなく、相続した不動産・ゴルフ会員権・事業用資産を売却する場合にも適用できます。特に相続した不動産を売る場合は、前述の「空き家特例(3,000万円控除)」との併用はできないため、どちらを使うかの判断が重要です。
まとめ
取得費加算の特例は、相続した財産を売却する際の「二重課税」を緩和する重要な制度ですが、期限内に売却・申告しなければ適用できません。相続後に株式・不動産の売却を考えている方は、相続税申告の段階から売却計画も含めて税理士に相談することが最善策です。
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